虐待か否か、という出来事

某モールで買い物を終え立体駐車場に駐めた自分の車へ戻るときに、通りがかったある車の中に一人残された子供が泣いているのを見つけた。車のエンジンはかかっていない。記録的な暑さが観測されるここ最近だ、空調のない車内は夕刻とはいえ相当な高温になっているかもしれない。
立駐内で買い物カートを集めていた店員を探して、事情を話す。驚きの表情を浮かべる初老の店員を現場に案内する。非日常の出来事にとまどう店員に、とりあえず店内にいるはずの警備員に知らせてはどうかと提案し、使いに走らせる。
車内に泣き続ける女児をどうにか宥めようと「もう大丈夫やで、もう少し待ってや」とフロントガラス越しに話しかけたところ、———女児が自らロックを外して外に出てきた。小学生ぐらいの年齢かと見受けられる子供だもの、そりゃ車のドアの開け方ぐらい分かるわな。
なおも嗚咽が止まらない女の子に、どうしたの、と尋ねる。「お父さんに置いていかれたの」。まあよく分からんがとにかく命に別状がないことを確認できたんで、先の店員が連れてきた警備員にあとを任せることにした。とりあえず店内放送で車の持ち主を呼び出すらしい。
そんなわけで事の顛末は確認していない。だってこんな措置をする親と顔を合わせて義憤をぶつけたところで、余計なことをしやがってとオレか子どもが責められるだろうことが目に見えているのだもの。警備員さん、厄介役はアンタに任せた。
よその家庭事情に首を突っ込むつもりはないけど、いくら子どもが自分でドアを開けることができるとはいえ、車の中に残された子どもが泣いているという状況は警察沙汰とするに十分だよなと思う。あるいはとぼけたフリして通報すればよかったかも。