盲目の天才・Raul Midonのライブに行ってきた

room6612006-02-02

2月2日、Zepp名古屋で行われたRaul Midonのライブに行ってきた。いやー、久しぶりにすごいものを見たわ。この感動をそのまま取っておくことができんのがもどかしい。以後彼の軌跡を追い続けることがオレのライフワークとなることだろう。
会場でTシャツを買った。ノリですわ。

では、ライブのレポートをば。
終業時刻ぎりぎりまで仕事をしていたため、到着はライブ開始の15分前になった。会場に集まった客層をみるに、若年層が薄いように思える。白髪にスーツといういでたちの紳士も散見される。平均年齢は30歳+ぐらいか。
約1ヶ月ほど前にあっさりと購入したチケットだったが、おれの席はステージ正面・ステージまでほんの20メートルという好位置。ここならフレットを這う指の動きもはっきりと見て取れそうだ。ワンドリンク制につき購入したビールを飲みつつ、Raulの登場を待つ。
しばらくして、Raul登場。彼はBlindであるため、マイクの前までスタッフに伴われる。この瞬間におれは初めて知った。彼はあの超絶パフォーマンスを、立った姿勢で演るのか。てっきり椅子に座って演るスタイルだと思いこんでいたんだが。ギターは胸よりやや下の位置に固定する、いわば田端義男スタイルなり(←誰か分かるか?)。バック演奏者はいない。

ステージは "Everybody" で幕を明ける。圧倒的な声量と超技巧ギター演奏に、早くも会場全体が呑まれた感があった。観客は手拍子も忘れ、ただひたむきに彼のパフォーマンスに視線を注ぎ、耳を傾ける。
彼の演奏スタイルについて書いておく。ギターを演ったことのある人がライブの観客になったときには、その視線は往々にしてギターの指板に注ぎがちだが、Raulに対してはそうはならないだろう。フレットを動く彼の左指は一般的なコードスタイルであり、注目すべきは弦を弾く右手にある。右手の動きがよく分からない。早すぎてよく見えないのだが、とりあえず打楽器と伴奏とメロディ演奏を同時にやる。それだけでもとんでもないパフォーマンスだが、彼はこれを「歌いながら」やるわけである。
歌に関して、Raulは歌詞を歌うばかりではない。間奏のあいだ、彼の唇はトランペットの音色を奏で続ける。あれはマウストランペットとでも言うのだろうか、いかんせん管楽器音痴のおれの耳には、本物のトランペットと遜色のない音色に思える。特にギターとマウストランペットが奏でるユニゾンはもう見事としか形容のしようがない。
はじめは彼のパフォーマンスを一生懸命目で追っていたんだけど、数曲を経るころにはもうそれをあきらめ、じっと耳を傾けることにした。こうして彼の演奏を堪能しているうちに時間の経過を忘れ、気づけばステージはラストの "State of Mind" で閉じられた。ギター一本でソウルありフラメンコありレゲエあり・・・彼のジャンルは一つに限定することはできんなー、というのがおれの持論だ。
 
彼が去っても止むことのない拍手。
おそらくアンコールの予定はなかったのだろう。会場に明かりがともり、「これをもちまして・・・」という場内アナウンスが流れ始めたそのとき、なんとRaulがスタッフに伴われて再登場。
大いに湧く会場。
そして彼がアンコールに選んだ楽曲は―――
―――なんと "'Round Midnight" だ! マイルズデイビスの旋律を彼のマウストランペットがなぞる。千変万化するギターアレンジが“スタンダードの名曲”を凡庸に陥らせないんだな。
糸を張りつめたような繊細な緊張感は、Raulの「Thank you, オヤスミナサイ!」の言葉で幕を閉じたのだった。
また次回も行くぞ!