博士の愛した数式

ネタがない。
それはおれがこの一週間平凡で退屈な日々を過ごしてしまったということなんだけど、そういえば本は幾冊か読んだか。そのうち一冊のレビューという形で記事を立てることにする。
博士の愛した数式。元数学者で、過去の事故により80分しか記憶を維持できない「博士」と、そこへ通う家政婦およびその息子が織り成すハートウォーミングなお話。物語はこの家政婦の主観で綴られており、その文体はやさしさを感じさせる。
この物語で面白いのは、話の随所に数学のトリビアがちりばめられ、それらがストーリーに深く結びついているところだ。
たぶんおれの頭の中にはパーティションがあり、数(理工)学系の知識と文学系のそれは相異なる領域に収められているんだと思う。この双方のものが有機的に結びつくなんてことは、まあ、ごく稀。でもこの物語はこれら双方の知識をうまく結びつける。パーティションを超えて異分野の知識が結びつく感覚がなんだかこそばゆくて、思わず微笑んでしまう、なんか不思議な感覚を覚えた。
(以下、少々ネタバレ含有注意)
さてこの本のタイトルとなっている、博士の愛した「数式」とは何をさすのかといえば、それは工学系にもおなじみの「オイラーの等式」ということになるだろう。なぜ博士はあの場面でこの式をもちだしたのか、それは物語中には明示されない(されてなかったと思う)。
なぜここでオイラーなのか。そのヒントをWikipediaで見つけることができた。

この式は、全く起源の異なる重要な2定数、円周率(π)とネイピア数(e)が、 極めて基本的な数、0, 1, i によって結びついている非常に重要な等式である。 この予想外の調和・連関を明らかにすることから、オイラーの等式は、"人類の至宝 " とも呼ばれる。
オイラーの公式 - Wikipedia

あの場面で博士が言い放った台詞を上記引用と重ね合わせれば、言葉少ない博士のもつ矜持に触れることができるわけであります。