質問ができない記者、記者に取材を依頼する記者、という既視感

http://netallica.yahoo.co.jp/news/47214という記事を読みまして。

「他人顔」とも揶揄された福田康夫首相を、辞任会見の最後の質問で切り崩した地方紙記者に注目が集まっている。首相は激怒したものの、官邸記者特有の“間合い”にとらわれない乾坤一擲(けんこんいってき)の質問は、首相の“素”の部分を引き出した。
(略)
記者には2日朝から取材依頼が殺到し、・・・

なんかこの一連の流れに既視感を抱いた。何だっけな———そうだそうだ、村上龍だ。
"半島を出よ" 半島を出よ〈上〉 (幻冬舎文庫) という著作のなかに、つぎのような場面があるのだ。

北朝鮮武装ゲリラの福岡ドーム占拠の第一報が報じられてから、横川はまったく睡眠をとっていなかった。特に昨日朝の占領軍司令官と市長の合同記者会見のあと、他の内外メディアから横川への取材申し込みが殺到した。合同記者会見では、朝日の伊藤や読売の森脇は高麗遠征軍の司令官達からほとんどまともな返答をもらえなかった。伊藤と森脇はドームが占拠された二日夜に東京本社が送り込んできた秀才タイプの記者だが、まるで日本の政治家に対するような質問をした。日本人の新聞記者は記事をまとめるのはうまいが質問ができない。特に海外の要人に対して効果的な質問ができない。重要なものは質問で、横川はそのことをソウル支局で学んだ。当時ソウルに集まっていた海外のジャーナリストは政治家や起業家がうろたえるような質問を常に必死で考えていた。答えに整合性が必要な質問で、記者会見の場はいつも真剣勝負だった。日本の秀才記者は回答をどこからか探してくる訓練しかしていない。

少し補っておくと、物語中、占領軍司令官と市長の合同記者会見において地方紙の横川という記者は他紙記者とは比較にならないほどに鋭い質問を投げ、占領軍司令官の回答を詰まらせたのでした。
物語と今回の騒動では記者会見の対象は異なるものの、なんか今回の騒動と重なるものがあるよなぁ。