家電メーカー技術部門の"中の人の"憂鬱

2つ目 「ハードウェア商売のリスク」

よしんば20%ルールが導入されたところで、その活動の中で発明されたイノベーティブなハードウェアが世に出ることは、現状の家電メーカーの組織体制,コンプライアンスの考え方を見るにつけ、「恐ろしく低い」と言わざるを得ない。なぜなら、ソフトウェアと違って出荷するには多大なコストが必要であり、万が一問題が発生した場合の回収コストなども計上すると途方も無いリスクがあるからだ。これがネットサービスであれば、とりあえずGoしてみて判断をユーザに委ねることもできるのだが、そうはいかないお金の事情,コンプライアンス事情があるというわけだ。となると、例え20%ルールで作ったちょっとしたハードウェアであっても、社内のお偉いさん方を回ってスタンプ・ラリーをコンプリートしなければ世に出せない、というわけだ。これほど楽しくないスタンプ・ラリーは他に無い...。

ウェブサービスであれば、アイデアと意志さえあれば技術者は単独でそれを実装し公表しその価値を世に問うことができる。多くのソフトウェア部品がモジュール化され公開されている昨今、そこそこ規模の大きなサービスを 一人で手がけることも可能だ。はじめはただの思いつきだった小さなアイデアが、プロトタイプを実装して使ってみると意外に面白いものであることに気づき、それが優れたサービスに成長していくこともあるんだろうと思う。 そんな草の根イノベーションの仕組みをハードウェア商売に取り入れたいと思ったとき、アイデア、意志に加えてどうしても必要なものがある。それは「仲間」だ。なにか新しいハードウェアのアイデアを思いついてそれを実装しようとすると、(そのデバイスの形態にも依るだろうけど)少なくとも回路設計とファームウェア設計の知見が必要となろう。でも家電開発部門内ではこれらの設計は技術者の専門に基づく分業で行われているだろうし、両方の設計経験のある技術者の数はごく少数であるはずだ。 ということで、仲間がいる。たとえ家電メーカー技術部門に20%ルールが採用されたとしても、アイデアと意志を抱く技術者が 志を共有できる仲間を探すことのできる「ルイーダの酒場」のような仕組み(もしくは空気)が社内にない限り、イノベーションは起こりにくいんじゃないかな。 家電メーカーの技術者のみなさん、どうでしょうか。 なおウチの会社では いろんな畑の技術者が虚心坦懐に集う「喫煙所」で様々な意志決定がなされていたりするんだけど、ここが「ルイーダの酒場」に近いのかもしれないなあ、と思わないでもない。非喫煙者の私はカヤの外ですか、じゃあいっそ煙草を始めようかな
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