愛知・長久手立てこもりの犯人は FM局のDJを知っていた

まず最初に、この事件に対する私のスタンスを。報道されてる範囲のことしか知りませんけど、それにしても身勝手な理由で家族を傷つけ、若い警官であり新米の父親でもある者の命を奪い、地域の平和を擾乱した大林容疑者の罪は決して許されるものではない、一生をかけて贖わなければならない、と考える。
それを前置いた上で。



大林久人容疑者(50)が逮捕前の18日、東海地方が放送範囲のFMラジオ局「ZIP―FM」(名古屋市中区)に電話をかけていたことがわかった。

(略)
同局が同容疑者から自宅電話番号を聞いた上で、同日午後2時10分すぎ、指名された地元で人気DJのジェイムス・ヘイブンスさん(36)が折り返し電話をした。



人質にしていた元妻(50)との無理心中をにおわせたといい、電話をかけたDJは、刺激を与えないように話題を変えようと工夫したという。

大林容疑者と話をしたDJのジェイムス・ヘイブンスさん(36)が22日、同局で記者会見し、明らかにした。

ジェイムス・ヘイブンス氏の番組での無法者DJっぷりは、人によっては拒絶感を抱くかもしれないけど、そのアナーキートークの中に私は時々彼の心に根ざす太い正義感を垣間見ることがある、みたいなことは大分前に書いた(→日本人以上に日本を愛する ガイジン―――独言ノ綴)。コトナカレ主義や上っ面だけの正義が蔓延する世の中で、彼の正義の不器用さが、アンチファンの少なからずも、名古屋で10年以上にわたって彼の人気を形成している一因なんだろう。
で。
上のニュースの記述にあるとおり、大林容疑者がZIPに電話をかけた18日は金曜日、ジェイムス氏の番組の放送日である。
この日容疑者はZIPを聴いていたんだな。
いや、この日以前もずっと、容疑者は毎週(ではないかもしれないけど)金曜日の朝、ジェイムス氏の番組を聴いていたんだろう。
容疑者はラジオで若き警官の死を知った。これで自分はどうしようもなく「悪」である。このあと射殺されるかもしれない。でもその前にせめて自分の言い分を誰かに聞いてもらいたい。 そんなときに、あの不器用なDJの声がラジオから聞こえてくる。自分が言い分を伝えられるのは彼しかいない。
そんな心境だったのかもしれない。
容疑者がZIPに電話をかけた日がたまたまジェイムスの番組の放送日だったのではない。ジェイムスが放送していたからこそ、容疑者はZIPに電話をかけたのである。
これは間違いない。
なにしろ、表層では無法なトークを繰り広げるジェイムスを聴いて、よし彼を利用しよう、なんて考えが起こるはずがないのだから。